2026年版インボイス経過措置の変更

TAMA活性化支援グループオープンセミナー インボイス経過措置の変更 インボイス

2026年9月、中小企業診断士の仲間を対象に、インボイス制度の経過措置変更(令和8年改正)をテーマにした研修の講師を務めました。その記録をご紹介します。

制度が始まって3年が経ちました。始まるときは大騒ぎだったことを覚えています。あっという間です。さて、制度開始時に激変緩和措置として、いくつかの経過措置が設けられました。この9月末で期限を迎え、一部見直しがありました。そこで、今回は制度変更を解説したうえで、我々は税理士ではないので、中小零細事業者の支援者として、我々中小企業診断士が明日から現場で使える「具体的な助言のしかた」「伴走支援の勘所」に重点を置いてお話ししました。単なる制度知識ではなく、事業者の資金繰りや経営判断にどう落とし込むかを支援する際に何に気を付けるべきかという点が、今回のセミナーで特に意識して準備したところです。

消費税・インボイスの仕組み

まず前提として、消費税の仕入税額控除の基本構造とインボイス制度の全体像を一緒に振り返りました。制度開始以降、現場でどんな混乱が起きてきたかを整理しながら、「なぜ今このタイミングで経過措置が見直されるのか」「原則的な姿と現在の特例措置がどういう関係にあるのか」を体系的におさらいしています。

支援先に法改正の影響を説明する際、単に「税額が変わります」だけで終わらせてしまうと、経営者にはなかなか響きません。消費税の預かり・支払いの仕組みから丁寧に説明することで、はじめて顧客の理解が深まります。経営者や財務担当者からの突然の質問にもその場で的確に答えられるよう、制度の全体像を頭に入れ直すところから始めました。

買い手の変更点:80%控除から70%控除へ

買い手側(発注側)にとって最大の見直しは、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の縮小です。これまでの「仕入税額相当額の80%控除」は令和8年(2026年)9月末で終了し、10月1日からは「70%控除」に引き下げられます(当初想定されていた50%への引き下げから見直され、2年間の70%措置が新設されました)。

この10%の控除率低下が利益率やキャッシュフローに与える影響を、具体的な数字で示しながら解説しました。実務で最も間違えやすいのが、請求書の発行日や支払日ではなく「課税仕入れを行った日(納品・役務提供完了日)」で80%と70%を区別するという判定基準です。月をまたぐ取引や継続的な役務提供の按分処理など、現場で混乱しやすいパターンも具体例を挙げながら、支援先への事前指導の手順を一緒に確認しました。

売り手の変更点:2割特例から3割特例へ

売り手側(受注側)については、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者向けの「2割特例」が令和8年分で終了し、個人事業主限定で新たに「3割特例」が2年間講じられることをお伝えしました。法人はこの特例の対象外で、2割特例終了後は原則どおり本則課税か簡易課税への移行が必要になります。個人と法人で扱いが変わる点は、支援先を誤らせないよう特に丁寧に整理しました。

そのうえで、3割特例・簡易課税・本則課税の3つの選択肢のうち、どれが最も有利になるかを、業種ごとのみなし仕入率や実際の経費比率を使ってシミュレーションする手法を持ち帰っていただきました。「制度を知っている」で終わらせず、「どちらが得か」まで一緒に計算できることが、支援者としての付加価値になると考えています。

届け出期限の緩和も引き続き、継続しています。
簡易課税制度は本来、適用を受けたい課税期間が始まる前に届出書を提出する必要があります。ただし、免税事業者がインボイス発行事業者として登録し、それによって課税事業者となる場合には特例があり、登録日を含む課税期間中に届出書を提出すれば、その課税期間の初日から簡易課税の適用が認められます。

会計ソフトの対応

制度改正の実務でボトルネックになりやすいのが、会計ソフトや経費精算システムの対応です。改正前の想定(50%控除)のまま設定が止まっている会計ソフトや、税区分の選択を手作業に頼っている運用では、令和8年10月以降に誤った仕訳が大量発生しかねません。

主要なクラウド会計・オンプレミス型ソフトのアップデート状況と、「70%控除用税区分」の追加・設定方法を確認したほか、自動仕分けの登録を利用している場合の設定変更に注意すべきことも共有しました。月次決算のチェックや業務効率化を支援先にアドバイスする立場として、事前に確認すべき設定チェックリストの重要性をお伝えしています。

診断士が今日からできる支援・助言

最後に、ここまでの内容を踏まえて「診断士が今日から実行できるアクション」に落とし込みました。買い手企業に対しては、取引先(免税事業者)の状況を定期的にヒアリングする仕組みづくりや、コスト増を踏まえた価格交渉・見直しのガイドライン策定をご提案。売り手企業に対しては、3割特例終了後の「簡易課税制度の届出」に関する救済ルール(申告期限までの届出で間に合うケースなど)を踏まえたスケジュール管理の手法を解説しました。

単に税額計算のやり方を教えるのではなく、税負担増を見越した資金繰り計画の見直しや、事業継続・売上拡大に向けた経営改善支援まで含めて考える——それが中小企業診断士ならではの総合的なコンサルティングだと考えています。

まとめ

令和8年改正は、単なる「経過措置の税率変更」にとどまらず、事業者の経理運用や取引関係の見直しを迫る重要な転換点であるといえます。参加された診断士の皆様からは、「経過措置の変更について全く把握していなかったので、とても勉強になった。」「買い手と売り手、双方の視点から具体的に説明していただき、よく理解できた。」といった声をいただきました。

制度がめまぐるしく変わる中でも、事業者の皆様が適切な経営判断を続けられるよう、知識をアップデートしながら伴走型の支援を続けてまいります。会計・IT・経営の掛け合わせで、税務の話を「わかる言葉」に翻訳し、実行可能なアクションにまで落とし込むこと——それが私の役割だと考えています。

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