財務分析というと、難しくてよくわからない、たくさん数字が並んでいて何を見たらよいのか分からない、と思われる方も多いでしょう。確かにそれぞれはちゃんと意味があって、こういう場合にはここを見るということがわかっていれば、それは意味のあるものなんですが、今うちの状態ってどうなの?と大局的に見たいときにはポイントを絞ってみるべきです。
ローカルベンチマークとは
ローカルベンチマーク(ロカベン)は、経済産業省が作成・提供しているエクセルシートで、財務指標と非財務指標に基づいて企業経営を評価し、企業と金融機関などが共通の目線で対話を深める入口となることを目的としています。
ローカルベンチマーク(経済産業省)
マンガでわかる「ローカルベンチマーク」(ミラサポPlus)
財務分析
ロカベンの財務分析には、「6つの指標」があります。財務分析というとたくさんの数字が並んでいる印象ですが、このロカベンでは、レーダーチャート(くもの巣グラフ)で6つだけ見ればだいたいわかるようにできています。くもの巣が大きく広がっているほど良い、小さいと平均以下、ということがわかります。そしてどの面が強くて、どこが弱いのか、6つだけなら何とかなりそうですよね!
6つの指標を簡単に見てみましょう。
- 売上高増加率
前期の売上高と比較し、どのくらい伸びているかをみることで、成長性を見ることができます。 - 営業利益率
=営業利益/売上高
稼ぐ力、収益性を見ることができます。営業利益は皆さんの会社の決算書を見ていただき、法人なら、売上高ー売上原価=売上総利益、売上総利益ー販売管理費=営業利益。個人事業主なら青色決算書の右下にある所得金額がこれにあたります。つまり、原価や経費を引いて残ったお金、ということになります。これを売上高で割ることでどのくらい効率的に儲ける力があるのかを見ることができるわけです。 - 労働生産性
=営業利益/従業員数
つまり、一人当たりの儲けをみることで生産性を知ることができます。A社とB社があって、A社は10人で100万の営業利益、B社は100人で100万円の営業利益を稼いでいるとして、両社の儲ける力は同じでしょうか。A社の労働生産性は10万円、B社は1万円ですので、A社はB社より10倍労働生産性が高い、ということが分かります。このように他社と比較することで、自社の強み弱みを把握することができます。 - EBITDA有利子負債倍率
=(借入金ー現預金)/(営業利益+減価償却費)
分子の(借入金ー現預金)は、実質的に借金がいくらかを求めています。中小企業ではあまりありませんが、借入しているけど、同程度の現預金を持っている企業もあって、こういう場合には実質無借金経営であると言えます。
分母の(営業利益+減価償却費)は、営業利益とすでに過去に支出していて現金支出のない減価償却費を足すことで、簡易的に今期の現金収入を求めています。
つまり、実質借金を現金収入で割ることで、今の借り入れが現金収入のない倍にあたるか、何年で返せるか、を図ることが可能になります。数年で返せるなら企業としてリスクは小さいですが、業績が悪化すると100年かかる計算になるケースもあり、企業の健全性を測る指標として使われます。 - 営業運転資本回転期間
={売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金+支払手形)}/(売上高/12)
計算式が長くてわかりづらいですが、経営の効率性を見ています。分子の{売上債権+棚卸資産ー買入債務}の部分は、必要資金を表しています。売掛金はお金が回収できるのは後になるし、在庫を持つということは先に支払うということです。逆に買い入れ債務は後払いということなので、資金量を減らすことができます。この必要資金のことを専門用語で「営業運転資金」または単に「運転資金」と呼びます。分子の営業運転資金をひと月当たりの売上高で割ることで、運転資金が売り上げの何か月分必要かを求めることができ、この値が小さい(回転期間が短い)ほど運転式を回収するスピードが速く、資本効率が高いと評価することができます。 - 自己資本比率
=純資産/負債・純資産合計
安全性を測る指標です。借入が多いと小さく、過去の利益が蓄積されていくと自己資本比率は高くなります。業種にもよりますが、おおざっぱに言うと、まずは30%を目指し、50%を超えると優良企業の仲間入りといえます。
非財務情報
ロカベンの非財務情報には、「商流・業務フロー」、「4つの視点」があります。つい、財務資料に目が行きがちですが、ロカベンの肝はむしろこちらの非財務情報にあるともいえると思っています。自社の強み弱みを見直し、支援者(商工会議所・商工会、金融機関、中小企業診断士など)と話をするときにとても便利です。
「商流・業務フロー」は、製品の製造工程やサービス提供の業務フロー、商流の各段階を言葉で書き出していきます。その時に差別化のポイントや選定理由を記載していくことで、自社は他社と比べて何が優れているのか、振り返ることができます。意外と日常に追われ忘れがちですが、改めて見つめなおし、支援者とこれを見ながら話をすることで、気づいていなかった自社の強みを発見することもよくあります。
「4つの視点」では、経営者、事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制の4つの視点、15項目で、自社の置かれている状況を書き出します。そこを認識したうえで、現在の状況と将来の目標を比較し、ギャップを把握することで、そのギャップを埋める活動が今自社がやるべきことが明確になる、というものです。つまり、目標からの逆算、ということですね。
まとめ
ロカベンは、財務面だけでなく、非財務面も含めた経営全般を俯瞰することができるため、企業の健全性を判断する上で有用なツールとして認知されています。数字に弱い経営者もこの6つをどう上げていけばよいかを考えればよいので、比較的とっつきやすいのではないでしょうか。
また、非財務情報を経営者がちゃんと向き合って書き出し、支援者の人とこれを見ながら話をしたら、きっと未来の話ができるはずです。