2023年8月4日に第16回災害復興まちづくり支援機構シンポジウム「専門家とともに考える災害への備え ~関東大震災100年 首都直下地震の復興まちづくり支援に備える~」と題して、ハイブリットで開催されました。
プログラム
第1部 基調講演「関東大震災の帝都復興と首都直下地震の事前復興」
東京都立大学名誉教授 中林一樹
第2部 復興支援の報告・パネルディスカッション
「東日本大震災における宮城県での復興支援の取り組みと課題」
宮城県災害復興支援士業連絡会会長一級建築士髙橋清秋
「西日本水害における広島県での復興支援の取り組みと課題」
広島県災害復興支援士業連絡会会長技術士(総合技術監理、建設、応用理学) 山下祐一
コーディネーター:東京都立大学名誉教授 中林一樹
パネリスト:(50音順)
技術士(総合技術監理、建設) 上野雄一
土地家屋調査士 小木曽聡
社会保険労務士 小島信一
不動産鑑定士 末原伸隆
弁護士 鈴木秀昌
中小企業診断士 藤田千晴
第1部 「関東大震災の帝都復興と首都直下地震の事前復興」
今年は関東大震災からちょうど100年にあたるということで、第1部では阪神・淡路大震災、東日本大震災などと比較しながら、関東大震災の際の首都復興をどのように成し遂げたのかについて、中林教授が講演されました。

焼け落ちた文部省
※写真は、関東大震災映像デジタルアーカイブより
関東大震災は歴史の授業で学びましたが、死者105,400人ということで、阪神・淡路大震災や東日本大震災と比べても、けた違いに被害が大きかったことを知り驚きました。
大震災 | 発生日時 | 主な被害 | 規模 | 全壊焼失 | 死者 |
関東大震災 | 1923.9.1 | 地震火災 | M7.9 | 418,000棟 | 105,400人 |
阪神・淡路大震災 | 1995.1.17 | 地震動 | M7.3 | 112,000棟 | 5,500人 |
東日本大震災 | 2011.3.11 | 津波 | M7.3 | 122,000棟 | 18,500人 |
関東大震災は火災による被害が多かったため、復興の際は火災による延焼を防ぐための都市づくりやそれまで課題とされていたことに取り組まれ、また、ボランティアによる被災者支援が行われ、関東大震災こそが日本のボランティア元年とのことでした。
復興は、被災者復興と被災地復興の2つの視点がとても大事だという話が印象的でした。町屋コミュニティの被災地支援はもちろん大切だが、そこで暮らす人たちの生活や企業・仕事といった産業復興も含めた被災者支援も併せて図る必要があるということでした。
第2部 復興支援の報告・パネルディスカッション
「東日本大震災における宮城県での復興支援の取り組みと課題」
初めに、宮城県災害復興支援士業連絡会 会長 髙橋清秋(一級建築士)より、『東日本大震災における宮城県での復興支援の取り組みと課題』と題して、報告されました。
宮城県には災害復興支援士業連絡会という組織があり、大規模災害の復興支援に向けて活動されています。とくに東日本大震災における建築士事務所協会の活動を中心にご報告いただきました。住宅や宅地の危険度判定や罹災調査を通して被災者を支援されました。
世帯ではなく、被災者一人一人の支援が必要であること、様々な支援を連携して必要とされる被災者に提供する必要があり、士業連絡会等の仕組みが重要であるとのお話は印象的でした。
「西日本水害における広島県での復興支援の取り組みと課題」
続いて、広島県災害復興支援士業連絡会 山下祐一氏よりご報告されました。
広島県災害復興支援士業連絡会は、東日本大震災を契機に2011年5月に設立されました。弁護士会をはじめとする16団体で構成されるのですが、広島県の中小企業診断士会は参加されていないようです。
2018年7月の西日本豪雨災害において、ボランティアセンター運営支援や被災者の相談対応、復興まちづくりへの支援に携わられたことについてご説明いただきました。やはり、実際に体験され、復興支援に尽力された方々の経験談をお聞きできることは、非常に大事なことだと感じました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、各士業の方から東日本大震災の復興支援に携わられている方もおり、復興支援に対してどのような支援ができるのか、各士業が支援できることなどのご説明をお聞きしました。
災害復興まちづくり支援機構とは

平成7年の阪神・淡路大震災の教訓をきっかけとして、議論を重ね、平成16年11月に設立されました。
(ホームページ)
設立の趣旨
大規模災害における緊急・応急対策や復興対策を迅速かつ円滑に進めるには、行政のみならず、数多くの専門知識を有する民間の個人・団体等の支援を欠かすことはできません。
一方専門的資格を有する者といえども、災害時における専門的活動は平常時におけるそれとは異なり、各災害時特有の条件の下での活動が要求されます。また、個別的・断片的に対応するのではなく、相互に連携調整を図りつつ、継続的かつ柔軟に対応する必要があります。
以上から、このような専門家個人や団体が、平常時から連係を密にし、いざというときの活動の仕組みをつくると共に研鑽を重ねて行く必要があると考え、関係各位及び諸団体に広く呼びかけ『災害復興まちづくり支援機構』を設立することにしたものです。
正会員
- 東京弁護士会
- 第一東京弁護士会
- 第二東京弁護士会
- 東京司法書士会
- 東京税理士会
- 東京都行政書士会
- 東京土地家屋調査士会
- 東京都社会保険労務士会
- 一般社団法人東京都中小企業診断士協会
- 公益社団法人東京都不動産鑑定士協会
- 一般社団法人東京都建築士事務所協会
- 公益社団法人日本建築家協会
- 公益社団法人日本技術士会
- 公益社団法人東京公共嘱託登記司法書士協会
- 日本公認会計士協会東京会
- 日本弁理士会関東会
- 公益社団法人東京社会福祉士会
以上、17団体(2023.08.13現在ホームページより)
最後に
第1部の中林教授のお話にもありましたが、今後の首都直下地震の想定は震源地や時期、時刻について、いくつかのパターンが策定されていますが、どの想定でも首都圏のどこでも震度6弱~7とされており、被害想定も聞いていると恐ろしくなります。だからこそ備えが必要だし、こういった士業連携が必要なのですね。
大災害の時こそ、我々士業がそれぞれ持つノウハウや経験を被災者支援に役立てられるように、士業連携団体の平時からのコミュニケーションが大事だし、私も何らかの形で関わっていきたいと思っています。
中小企業の視点では、まずは、事業継続力強化計画を策定し、備えることが大事です。大げさなBCPを作ろうと思うと大変ですが、事業継続力強化計画は、最低限の項目を埋めていく形式で作ることができ、何が足りないかが把握でき、何に取り組むべきか考えるきっかけとなります。ぜひ全企業に取り組んでいただきたいと思っています。